隈 研吾展 Kengo Kuma Studies in Organic

会場:ギャラリー・間(東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F)
会期:2009年10月15日〜2009年12月19日
時間:11:00-18:00 金曜11:00-19:00
休館:日曜・月曜・祝日

抽象的なものから抜け出して、有機的なものへと向かいたいと考えている。有機的なものは、単なる自然とも自然素材とも違う。有機体は生命体に固有の「生成」のダイナミズムを有していなければならない。ある単位(遺伝子)がいかにして環境と闘いながら(あるいは正確にいえば環境に“負けながら”)生きられる全体を生成するかの驚くべき過程を、徹底的にスタディし、有機体にたどり着こうと我われは試みている。具体的にいえばそれぞれのプロジェクトにおいて、ある固有な物質が発見され、その物質が様々な悪戦苦闘、紆余曲折を経て、ある全体を生成していくプロセス、その旅のようなシークエンスに、無性に惹かれるのである。ここでいう「ある全体」は必ずしも建築である必要はなく、家具や小物のままとどまることもあるし、建築を通り越して都市になってしまうこともある。あるいは建築のように立ち上がらずに、地べたに這いつくばったままであることもよくあって、それは生命体がその棲む環境に応じて様々な姿をとり、様々な仕方で生活、生存しているのと全く同じである。どんな全体でも我われは一向に構わないわけで、各プロジェクトにおいて毎回違った形で現されるその様々な有機体に対し、その都度驚かされたり、驚くだけではなく愛しいと思ったり、なでてみたくなったりもするのである。有機体とはそれほどに、それぞれにユニークで愛らしい存在なのである。(隈研吾
隈研吾氏はポストモダンが衰退しバブルが崩壊した1990年代、オブジェクトとしての建築に疑問を呈し、「建築の消去」を自身の建築テーマに掲げ、その思考を「ルーバー」や「孔」といった建築的手法に変換して設計活動を展開してきました。2000年代に入り、活動の場が海外にも広がると、「見せる/消す」という二項対立では説明できない、より複雑な関係性をもった魅力的な建築を数多く提案し続けています。近年では、国内外の大規模コンペで立て続けに最優秀賞を獲得し、今世界で最も活動が注目されている建築家の一人です。本展では、常に建築的思考を深めながら疾走し続ける隈 研吾氏の現在の活動を、「Studies in Organic」と題し紹介します。会場には、多数のスタディ模型やサンプルを展示し、常に複数のプロジェクトが影響し合いながら同時進行している隈氏の設計現場をドキュメントします。また中庭には、MoMAに出展した実験的な構造システム「ウォーター・ブランチ」による未来の仮設住宅を1分の1で組み立て、さらに、現在進行中の2つのプロジェクト、「ブザンソン芸術文化センター」[ブザンソン、フランス、2011年竣工予定]と「グラナダ・パフォーミングアーツ・センター」[グラナダ、スペイン、2013年竣工予定]を25分の1(予定)の大型模型で展示し、様々なスケールの展示物を通して隈建築の現在形を読み解くことができる会場構成としています。(ギャラリー・間
ギャラリー・間http://www.toto.co.jp/gallerma/

あまり好きではない建築家、隈研吾馬頭広重美術館など好きな作品もあるのだけど。
この人の本はおもしろいし、このエキシビションの会場構成もおもしろかった。模型がたくさんあって、スタディのプロセスがよくわかった。こういうプレゼンテーションや能書きは非常に説得力があってうまいのだけど、実際の作品はそんなに魂を揺さぶられるような感動的な空間の力を感じない。そういう魂に訴えるような「重さ」がないところがこの人の特徴でありよいところなのかもしれないとも少しは思った。でも、近年のものすごい量の作品は、酷いものはそんなにないけど、どれもソツなくまとまっている感じで、やっぱりつまらないと思った。でも、これだけの量をそこそこのクオリティで仕上げてくると、頼む側としては頼みやすいよなとも思う。善くも悪くも、今的な建築家なのかもしれない。そういう今的を掴むのもこの人はうまいのかもしれない。