ジーコが遺したもの

昨日、ジーコの退任会見が行われた。「悔いることも恥じることもない。」と述べて彼は去っていったが、4年間で彼が日本サッカーに遺したものとは一体なんだったのだろうか。犯人探しをするつもりは無いのだが、やはりそれなりに選手のプレーには優劣があったと思う。4年間のジーコと、今大会の選手について振り返ってみたい。
サムライブルー」という愛称をつけられた今回の日本代表、そう名付けたのは第3者なので選手たちに非は無いけれど、サムライと呼ぶにはほど遠い、メンタルの弱さというか意気地無しな面ばかりが目立つ大会だった。メンタルが弱い、、、じゃあフィジカルは強いかというとこれもまた弱い。じゃあ、何が強いんだ。。。
中村俊輔 
ドイツに行く飛行機で風邪引いて、試合直前に熱が出て、思うようなプレーができず、最後のインタビューで涙で言葉を詰まらせてウジウジ悔しがっている。ホントにサムライだったら切腹だ!何やってんだか。私が代表監督でも中村俊輔は選ぶだろう。でも、プロ意識の無さというか根性の無さというか。呆れてしまう。トルシエが4年前に彼を落選させた理由が今回やっとわかった気がした。
中田英寿: 
できることを精一杯やっているとは思った。気持ちも前面に出ていた。彼がいわゆる世界基準だと思う。彼は普通なのだ。そんな彼が周りの選手から浮いている。彼が厳しい言葉でチームを鼓舞すればするほど、彼は浮いてゆく。これは異常だ。ほかの選手の仲良し集団的なヌルさはテレビで見ていてもわかる。中田自身もそんなチームメイトに失望したことだろう。
宮本恒靖: 
彼にとっては辛いワールドカップになった。優等生タイプだからしょうがないのかもしれないが、キャプテンの器ではなかったということか。キャプテンシーが無い。みなさん見ていて、宮本がチームの精神的支柱に見えました?キャプテンに絶対必要な条件だと思う。チームがピンチのときキャプテンがみんなを盛り立てなければならないのに、一番落ち込んでいるではないか。彼を評価するときみんなは口をそろえて、「統率力」という言葉を使う。これは極めて危険な言葉で抽象的な概念だ。現実は身長が低く、フィジカルに弱いというDFとしてはかなり厳しい選手だと思う。それを「統率力」という魔法の言葉と、そのルックスも含めたタレント性で周囲もどこか騙し騙しここまで受け入れてきていた気がする。ディフェンスラインの統率は少しはできていたのかもしれないが、世界と比べればそれほどの強みにはなっていないように思えた。
柳沢敦: 
クロアチア戦での彼のあのシュートミスは試合直後は私も相当頭に来たけど、彼に関してはいつもあんな感じだから仕方ないのかもと思うようになってきた。彼を責めるより、日本FW陣の質に落ち込むほかない。
ジーコ 
ありえようの無い比較をしてもしょうがないが、今、トルシエジャパンジーコジャパンが試合をしたら、ジーコジャパンは負ける気がする。ジーコは個々の創造性、自由をウリにした。ブラジル人らしいコンセプトだと思う。ただ、それが日本人に合わないことは明らかだった。日本人にはブラジル人のような創造性は無い。その代わり勤勉さがある。やっぱりヨーロッパの組織型サッカーが合うと思うのが普通である。でも、日本も変わらなきゃ駄目だと思ったからブラジル人監督にしたのかもしれないが、なぜジーコなのか。就任当初から疑問だった。だって彼は監督経験がない。監督として素人の人間に、テクニックもフィジカルも世界レベルからすれば低い、おまけに創造性に乏しい選手たちに、ブラジルのような楽しいサッカーを植えつける。。。これは神業だ。そもそも無理なのだ。監督経験が無い上、選手としてはジーコは天才だから、できない選手を育てるのもうまくない。「自由なサッカー」とはいえ、最低限のルールは必要である。それを全部選手に考えさせる。主体性は少しは身に付くだろうが限界がある。そして、今回のワールドカップのようにピンチに陥ったときに拠り所にするのはやっぱり監督の指示だと思う。大黒の奇跡に掛けるしかないベンチワークの引き出しの無さは悲劇的だ。日本代表の監督に求められるのは、選手たちの能力以上のものを引き出せる力を持った人だろう。ヒディングのように。ジーコは選手としては天才であり神様である。野球で言えば長嶋茂雄だ。長嶋監督は巨人の監督だからそこそこ勝てたわけで、長嶋さんを楽天の監督にしたら楽天が強くなると思う人はいるだろうか?彼を辞めさせるチャンスは何回かあった。アジアカップアジア最終予選アジアカップで日本はかなり厳しい試合内容だった。負けてもおかしくない試合ばかり。でも、そこで奇跡が何回も起きた。川口のスーパーセーブ、中澤のロスタイムの劇的同点ゴール、などなど。。。あれよあれよと優勝してしまった。アジア最終予選の初戦、北朝鮮を相手にまさかの引き分けで終わりそうになった。そこでまた奇跡が起きる。大黒の決勝ゴール。とにかくジーコは運がよかった。私も、ジーコには反対だけど、彼には運があることは確信した。その運でワールドカップもどうにかなるかもしれない。大会直前、そんな淡い期待を抱いていたが、やはり世界は甘くなかった。
2010年のワールドカップに向けて: 
日本サッカー協会ジーコ任命責任も問われるし、何より、若手の育成に失敗したことの責任は重大である。4年後を担う若手が全く育っていない。そして今回、ジーコが控えでもいいから4年後を見据えて若手を召集するべきだったと思う。4年後がイメージできそうなのは、阿部勇樹闘莉王長谷部誠くらいしか名前がでてこない。GKなんて4年後も川口と楢崎が居そうだ。カレン・ロバートがワールドカップで点を取るシーンなんてどんなに想像力を働かせてもイメージできない。

ということで長々と溜まりに溜まった不満を書かせてもらいましたが、次期監督はオシムということで期待大。でも、今のメンバー以上に精神的に脆い谷間の世代たちなので4年後も心配だ。オシムの手腕に賭けるしかない。