阪神大震災から10年

阪神大震災から今日で10年が経ったそうだ。テレビでも盛んに取り上げられていたが、ある番組で、阪神高速道路の橋脚倒壊で息子を亡くした80歳くらいの女性が手抜き工事をしたと阪神高速道路公団を相手取り裁判を起こしたエピソードが紹介されていた。被告の公団側は施工図面も倒壊したコンクリート片の現物も廃棄して残っていないの一点張りで、証拠は、有識者らによる調査委員会の報告書のみ。その報告書も、「手抜き工事はなく、設計強度以上の揺れによる倒壊で公団に不備はない」とするものだった。しかし、この調査委員会のメンバーは、構造力学の専門家中心で材料工学の専門家は含まれていない上に、ゼネコンとの繋がりの色濃いメンバーが多かったそうだ。しかし、ある材料工学専門の大学教授が、この調査報告書に疑問を投げかけ、この女性の証人に立ったそうだ。鉄筋圧接面が横一直線に破断するというありえない倒壊の仕方で明らかに手抜き工事であるというのがこの教授の主張だったが、聞き入れられることはなかった。。。この女性は6年の裁判の末、一審で敗訴。上告したが、80歳という体力的な理由から、泣く泣く和解に応じたそうだ。この女性は和解会見の席上で、「すべての専門家の先生方が私側の証人に立ってくださった先生のように、ご自分の専門分野に誇りを持って、正直に手抜き工事であると指摘して欲しかった。。。」という趣旨のことをおっしゃっていた。重いコトバである。ピンとくる人もいるかもしれないが、まさに建設版「白い巨塔」である。薄っぺらいコトバかもしれないが、建築・都市とは人の命を預かる責任重大なものであるということを再認識させられる一日だった。表層のデザインに一喜一憂してていいのか。。。
震災というのはとっても不幸な出来事だ。しかし、それは大きな教訓をわれわれにもたらした。中国なんかはいま猛スピードで高層ビルがタケノコのように建設されているが、手抜き工事のオンパレードらしい。。。やはりこういう震災とかが起こらないと、そういう建築文化というかモラルって成熟しないのかな。。。