都市へ仕掛ける建築 ディーナー&ディーナーの試み

会場:東京オペラシティアートギャラリー(東京都新宿区西新宿3-20-2)
会期:2009年1月17日〜2009年3月22日
時間:11:00-19:00 金曜土曜11:00-20:00
休館:月曜・2月8日(全館休館日)
入場料:一般 1,000円

スイス・バーゼルを拠点にヨーロッパ各地でプロジェクトを展開するディーナー&ディーナー(D&D)は、父マルクス・ディーナー(1918-1999)の事務所を息子ロジェ・ディーナー(1950ー)が引き継ぎ、主宰している設計事務所です。新築・改築を問わず、建築は現存する都市の一部にならなければならないと考えるD&Dの作品は、建築家自身のスタイルを商標登録のように掲げた個性の強い建築とは際立った対照を見せます。周辺環境を丹念に分析しながら設計される建築は、都市になじんで一見匿名的です。それぞれの状況に意図的に埋もれるように建つその建築は、都市の記憶をたぐり、その現在の活動を読み、人びとが建築と都市の関係に新しい意味を発見することに手を貸す存在となるべく、都市に対して内部から微妙なパルス(振動)を発生させています。声高に変化を主張する建築の対極にある、静かにささやきかけるようなD&Dの建築とその思考の軌跡を知ることは、都市という総体に具体的な価値を見出しにくい日本において、あらためて都市と建築の関係を考える機会となることでしょう。
東京オペラシティアートギャラリーhttp://www.operacity.jp/ag/

かなりマニアックなエキシビションだった。展示室に入ると、17組の木製の模型と図面のみが並んでいる。写真も解説文も無い。だから展示を見ているだけでは何のことだかさっぱり分からない。床にはプロジェクトナンバーのみ記され、写真や解説文は展示室入口で渡されたガイドブックにのみ掲載されている。なので、みんな模型の前でガイドブックをパラパラめくり熟読するという奇妙な光景が広がる。しかも、このプロジェクトナンバーがランダムに配置されているから、探すのも大変。
次の部屋には、コンペに提出した資料がそのままテーブルに置かれていて、自由に閲覧できる。これもマニアックな内容。映像のコーナーを挟んで、次は5つのプロジェクトのモックアップの一部や1/2の詳細図などが並ぶ、さらにマニアックな内容。
私は一人で行ったけど、建築関係もしくは建築好きな男子と特に建築に興味ない女子という組み合わせで訪れると、間違いなく女子は不機嫌になりそうな展示です。素人にはかなり難解だから。建築関係の人でも、エキシビションの内容を完全に理解するには丸一日くらいかかりそう。このエキシビションは、平たく言うと、「都市や周辺環境と建築との関わりにおけるD&Dの試み」がテーマである。つまり、D&Dはこの都市や周辺環境に対する建築設計の試みがユニークであるということになる。しかし、「建築を設計するときは土地や周辺環境との文脈をよく考慮するべし」というのは、どこの建築学科でも当たり前のように教わるあたりまえのことだ。限られた時間であったけど、一生懸命鑑賞したものの、D&Dがどのくらい他に無いユニークなアプローチで取り組んでいるかをイマイチ理解できなかった。創っている建築はけっこう好きな感じだし、都市マスタープランレベルの大規模プロジェクトも手がけていて興味深かったけど、前述の命題に対する明快な回答を得られないもどかしさが残った。時間と私の理解力が足らなかっただけかもしれないけど。
ひとつ印象に残るディーナーの言葉があった。設計図書というものについての言及。「いわば未来の考古学ともいえるような、まだ存在しない建築物を忠実に記録していく作業の結果が設計図書なのです。」
そういえば来場者の中に、太っちょでだらしない格好をしたボサボサ頭のどこかで見覚えのあるオッサンが居るなぁ、、、と思っていたら、やっぱり太郎くんでした。
マニアックだけどここまでマニアックな建築展はそうは無いので建築関係者は必見です。